※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。
自動運転中の事故は誰の責任になるのか。レベル2とレベル4の違い、ドライバー・運行供用者・運行事業者・メーカーの関係、自賠法による被害者救済、保険会社からメーカー等への求償まで分かりやすく解説します。

自動運転中に事故が起きたら、誰が責任を負うのでしょうか。
「車が自動で運転していたのだからメーカーの責任では?」
「ドライバーが運転していなくても、自動車保険は使える?」
今後、自動運転車が増えるにつれて、このような疑問を持つ人も増えてくるでしょう。
結論からいうと、自動運転車が事故を起こしたからといって、直ちにメーカーの責任になるわけではありません。
重要なのは、
- どの自動運転レベルだったのか
- 事故時に誰が運転の主体だったのか
- システムが正常に作動していたのか
- 定められた使用条件内だったのか
- 車両やシステムに欠陥がなかったのか
などを分けて考えることです。
特にレベル2とレベル4では、運転の主体が大きく異なります。
レベル2はドライバーが運転の主体です。
一方、レベル4では、定められた運行設計領域(ODD)の範囲内でシステムが運転を担います。
ただし、レベル4だからといって、事故後の責任がすべて自動車メーカーやシステム開発会社へ移るわけではありません。
さらに自動運転事故では、
「被害者へ誰が補償するのか」
と、
「事故原因を調査した結果、最終的に誰が責任を負うのか」
を分けて考える必要があります。
この記事では、自動運転中に事故が起きた場合の責任について、レベル2とレベル4の違い、自賠法、保険、メーカーへの求償まで順番に解説します。
- レベル2とレベル4では「運転の主体」が違う
- レベル2の事故は基本的にドライバーの運転として考える
- レベル2でもメーカー側の問題が検討される場合はある
- レベル4ではシステムが運転を担う
- レベル4の事故では誰の責任になる?
- 自賠法の「運行供用者責任」とは
- 国土交通省は従来の運行供用者責任を維持する整理を示している
- 「被害者への補償」と「最終的な責任」は分けて考える
- 自賠責保険が補償するのは基本的に「人」の損害
- 「事故の責任」は民事・刑事・行政で分けて考える
- メーカーへの「求償」とは?
- 自動運転事故では「車両データ」が重要になる
- ロボタクシーの乗客が事故に遭ったらどうすればいい?
- 自動運転事故で確認される10項目
- よくある質問
- まとめ|「自動運転だからメーカー責任」と単純には決められない
- 記事作成に使用した一次情報・公式資料
レベル2とレベル4では「運転の主体」が違う
自動運転中の事故責任を考えるうえで、最初に確認したいのが事故当時の自動運転レベルです。
レベル2とレベル4では、運転の主体が大きく異なります。
| 比較項目 | レベル2 | レベル4 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 運転支援 | 限定領域での高度運転自動化 |
| 運転の主体 | ドライバー | ODD内ではシステム |
| 周囲の監視 | ドライバー | ODD内ではシステム |
| システムが対応できない場合 | ドライバーが直ちに対応 | システムが安全確保に必要な対応を行う |
| 車内の運転者 | 必要 | 制度・運行条件を満たせば不要 |
| 事故時の主な確認事項 | 前方監視、使用条件、警告、ドライバー操作など | 運行条件、システム状態、運行体制、保守管理、事故原因など |
ここで重要なのは、
「車がハンドルやアクセル・ブレーキを操作していたか」だけでは、自動運転レベルは判断できない
ということです。
車が自動でハンドルや加減速を操作していても、それがレベル2の運転支援であれば、運転の主体はドライバーです。
その機能が、
- 運転支援なのか
- 認可された自動運行装置なのか
- 使用条件内だったのか
などを確認する必要があります。
レベル2の事故は基本的にドライバーの運転として考える
レベル2では、システムが操舵と加減速を同時に支援していても、ドライバーが運転の主体です。
警察庁も、運転支援機能について、ドライバーが絶えず前方や周囲の状況を確認し、安全運転を行うことを前提とした機能であると注意喚起しています。
そのため、レベル2使用中に事故が起きた場合には、
- ドライバーが前方や周囲を確認していたか
- すぐに操作できる状態だったか
- システムから警告や解除表示が出ていなかったか
- 対応道路・速度・天候などの使用条件を守っていたか
- ブレーキやハンドル操作をいつ行ったか
- 車両や運転支援機能に不具合がなかったか
などが重要になります。
「ハンズオフ=自動運転」とは限らない
特に誤解しやすいのがハンズオフ機能です。
ハンドルから手を離して走行できる機能であっても、レベル2である限り、周囲の監視責任までシステムへ移ったわけではありません。
「車が自動で走っていたから、自分には責任がない」
とは単純にはいえない点に注意が必要です。
レベル2でもメーカー側の問題が検討される場合はある
では、レベル2で事故が起きた場合、必ずすべてドライバーの責任になるのでしょうか。
そうとも限りません。
事故原因を調査した結果、
- 車両そのものの欠陥
- 運転支援システムの不具合
- センサー等の異常
- 不適切な警告表示
- 使用方法についての説明
などに問題が疑われれば、メーカーや関係事業者の責任が検討される可能性があります。
ただし、
「システムが作動していたからメーカー責任」
あるいは、
「ドライバーが乗っていたからメーカーには責任がない」
と一律に判断できるものではありません。
実際の責任は、
- 事故状況
- 車両データ
- 警告の有無
- ドライバーの操作
- 車両の整備状態
- システムの作動状況
- 取扱説明書などの記載
といった証拠を確認して個別に判断されます。
レベル4ではシステムが運転を担う
レベル4になると考え方が変わります。
レベル4は、定められた運行設計領域(ODD)の範囲内でシステムが運転を担う仕組みです。
ODDとは、自動運転システムが作動できる条件のことです。
例えば、
- 道路
- 地域
- 速度
- 時間帯
- 天候
などについて条件が設定されます。
その条件内では、システムが、
- 操舵
- 加減速
- 周囲の監視
- 運転継続が難しくなった場合の対応
などを担います。
日本では、運転者がいない状態で公道を走るレベル4相当の運行について、道路交通法上の**「特定自動運行」**という許可制度があります。
特定自動運行を行う事業者などは公安委員会の許可を受け、特定自動運行計画に沿った運行体制を整える必要があります。
レベル4の事故では誰の責任になる?
レベル4の事故では、運転席にいるドライバーだけを見て責任を判断することはできません。
事故原因によって、複数の関係者が確認対象になります。
| 関係者 | 主に確認される事項 |
|---|---|
| 車両所有者・運行供用者 | 運行支配、運行利益、点検・整備、保険など |
| 特定自動運行を行う事業者 | 許可内容、運行計画、運行体制、主任者の対応など |
| 遠隔監視・運行担当者 | 警報や異常の把握、担当業務、定められた対応など |
| 車両・システムメーカー | 車両・自動運行装置の欠陥や不具合、警告、設計など |
| 保守・通信・地図等の事業者 | 契約上の役割、保守状況、提供情報、事故との因果関係など |
ここで注意したいのは、関係者が多いからといって全員が同じ責任を負うわけではないことです。
それぞれが担っていた役割や義務と事故原因との因果関係を確認したうえで判断されます。
自賠法の「運行供用者責任」とは
自動運転事故を理解するうえで重要になるのが、運行供用者責任です。
自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条では、自己のために自動車を運行の用に供する者が、その運行によって他人の生命または身体を害した場合の損害賠償責任を定めています。
この責任を負う立場が「運行供用者」です。
典型的には、
- 自動車の所有者
- 自動車運送事業者
などが該当します。
つまり、
実際にハンドルを握っていた人=運行供用者
とは限りません。
自賠法は被害者救済を重視した制度であり、運行供用者が免責されるためには法律で定められた要件をすべて立証する必要があります。
国土交通省は従来の運行供用者責任を維持する整理を示している
国土交通省の「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」は2018年、レベル0からレベル4までの車両が混在する過渡期における事故責任について整理しました。
報告書では、
- 自動運転車でも所有者や自動車運送事業者に運行支配・運行利益を認められる
- 現在の運行供用者責任の仕組みは迅速な被害者救済に有効
- システム側に事故原因がある場合には、保険会社などからメーカーなどへの求償を検討できる
といった考え方から、従来の運行供用者責任を維持することが適当としています。
ただし、この報告書は自動運転車と従来車が混在する過渡期を前提としたものです。
その後も国土交通省では、ロボットタクシーの導入などを見据えて、自動運転における自賠法上の損害賠償責任について検討が続けられています。
今後の制度変更には注意が必要です。
「被害者への補償」と「最終的な責任」は分けて考える
自動運転事故で非常に重要なのが、この考え方です。
被害者への補償と、事故原因に応じた最終的な責任分担は同じではありません。
自動運転車では、
- ソフトウェア
- カメラ
- レーダー
- LiDAR
- 通信
- 地図情報
- 車両整備
- 運行管理
など、多くの要素が事故原因の調査対象になる可能性があります。
原因調査に時間がかかるたびに被害者への補償まで止まってしまえば、被害者救済が遅れてしまいます。
そこで国土交通省の2018年の整理では、
事故発生
↓
被害者の救護・事故受付
↓
自賠法・保険による補償判断
↓
並行して車両データなどから事故原因を調査
↓
車両・システムの欠陥や運行上の問題などを確認
↓
必要に応じて関係者間で求償・責任分担
という考え方が示されています。
つまり、
「メーカーの責任かどうかが確定するまで、被害者は何も補償されない」
という考え方ではありません。
ただし、実際にどの保険からいくら支払われるか、誰に求償するかは、事故状況や契約内容によって異なります。
自賠責保険が補償するのは基本的に「人」の損害
自動運転車でも、自賠責保険・共済の基本的な役割は変わりません。
自賠責保険が対象とするのは、人身事故による対人損害です。
相手の車やガードレール、建物などの物損は自賠責保険の対象ではありません。
| 損害 | 主な補償・請求の検討先 |
|---|---|
| 相手のけが・死亡 | 自賠責保険・共済、任意保険の対人賠償など |
| 相手の車・物の損害 | 任意保険の対物賠償、民事上の損害賠償など |
| 自分・同乗者のけが | 人身傷害保険、搭乗者傷害保険など |
| 自分の車の損害 | 車両保険、相手方への請求など |
任意保険については、補償内容や免責事項が契約によって異なります。
ロボタクシーなど事業用車両の場合は、事業者が加入している保険や補償制度を確認する必要があります。
▶自賠責保険と任意保険の違いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
「事故の責任」は民事・刑事・行政で分けて考える
「誰の責任なのか」という言葉だけで考えると、自動運転事故は分かりにくくなります。
事故の責任には、大きく分けて複数の制度が関係するからです。
民事上の責任
被害者の、
- 治療費
- 休業損害
- 慰謝料
- 車などの物損
を賠償する責任です。
自賠法、民法、任意保険などが関係します。
刑事上の責任
事故時の行為が犯罪の要件に該当するかを判断します。
レベル2であれば、ドライバーが適切に前方や周囲を監視していたか、必要な操作を行ったかなどが問題になる可能性があります。
レベル4では、具体的な事故原因と各関係者の行為・注意義務を調べなければ判断できません。
行政上の責任・処分
運転免許に関する処分のほか、特定自動運行の許可や運行計画に関係する措置などがあります。
対象になる制度や主体がそれぞれ異なります。
そのため、
「民事上の賠償が行われた=刑事責任も確定した」
あるいは、
「刑事処分がなかった=民事責任もない」
ということではありません。
メーカーへの「求償」とは?
自動運転事故では、今後特に重要になる可能性があるのが求償です。
求償とは、いったん被害者などへ損害を補償した保険会社などが、その事故について責任を負う別の関係者へ、支払った金額の全部または一部を請求することです。
例えば事故原因を調査した結果、車両や自動運転システムの欠陥が確認された場合には、メーカーなどへの求償が検討される可能性があります。
ただし、
「自動運転中に事故が起きた=メーカーへ求償できる」
わけではありません。
事故原因との因果関係を確認する必要があります。
そのため重要になるのが事故時のデータです。
自動運転事故では「車両データ」が重要になる
自動運転事故の原因調査では、従来以上に車両やシステムのデータが重要になると考えられます。
例えば、
- 自動運行装置や運転支援機能が作動していたか
- 警告や引継ぎ要請が出ていたか
- ドライバーがいつ操作したか
- 遠隔担当者がどのように対応したか
- 車載カメラやドライブレコーダーの映像
- EDRなどの記録
- 車両の点検・整備履歴
- ソフトウェア更新状況
- ODDの条件内だったか
- 当時の天候や道路状況
などです。
ただし、保存されるデータ、保有者、取得方法、開示される範囲などは車両や制度によって異なります。
事故に遭ったからといって、契約者がすべての車両データを自由に取り出せるとは限りません。
ロボタクシーの乗客が事故に遭ったらどうすればいい?
今後、日本でもロボタクシーが普及すれば、
「自分は運転していないのに事故に遭った」
というケースも増えてくる可能性があります。
ロボタクシーの乗客は通常、自ら運転操作を行いません。
事故に遭った場合、乗客自身がその場で、
「システムに問題があった」
「メーカーの責任だ」
「運行事業者の責任だ」
と判断する必要はありません。
まず、
- 負傷者の救護
- 安全確保
- 警察への連絡
- 運行事業者への連絡
- 必要に応じて医療機関を受診
という通常の事故対応を優先します。
そのうえで、
- 利用したサービス
- 乗車時刻
- 車両番号
- 事故場所
- アプリの利用履歴
- 運行事業者との連絡内容
などを保存しておくと、その後の確認に役立ちます。
身体に痛みや違和感がある場合には、早めに医療機関を受診することも重要です。
▶交通事故を起こしたとき・事故に遭ったときの初動対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。
自動運転事故で確認される10項目
自動運転・運転支援中に事故が起きた場合、「自動運転中だった」という情報だけでは責任を判断できません。
少なくとも次の項目を分けて確認する必要があります。
- 車両の正式な自動運転レベル
- 事故時に機能が作動していたか
- 機能の使用条件内だったか
- 誰が周囲を監視する設計だったか
- 警告や引継ぎ要請が出ていたか
- ドライバーや運行担当者がどう対応したか
- 車両・システム・通信などに不具合がなかったか
- 点検・整備・ソフトウェア更新が適切だったか
- 人身損害と物的損害のどちらが発生したか
- どの保険・補償制度が適用されるか
事故原因や過失割合は、これらの証拠を確認したうえで個別に判断されます。
よくある質問
レベル2で事故を起こしたらドライバーの責任ですか?
レベル2ではドライバーが運転の主体です。
そのため、前方・周囲の監視や必要な操作などが確認されます。
ただし、車両や運転支援システムに欠陥・不具合などがあった場合には、メーカーなどの責任が問題になる可能性もあります。
ハンズオフ運転中ならメーカーの責任になりますか?
ハンズオフ機能が使えるというだけでは判断できません。
レベル2の運転支援であれば、ハンドルから手を離せる場合でもドライバーが運転主体であり、周囲の監視が必要です。
正式な自動運転レベルと使用条件を確認する必要があります。
レベル4で事故が起きたらメーカー責任ですか?
必ずメーカー責任になるわけではありません。
運行事業者、車両所有者、遠隔監視担当者、メーカー、保守事業者など、それぞれの役割と事故原因との関係を調査して判断されます。
自動運転車でも自賠責保険は使えますか?
自賠責保険・共済は人身事故による対人損害を対象とする制度です。
ただし、実際の支払いについては事故状況などをもとに判断されます。
自動運転車が事故を起こしたら、被害者はメーカーへ直接請求するのですか?
必ずしもそうではありません。
国土交通省の2018年の整理では、従来の運行供用者責任を維持して被害者救済を図り、その後、事故原因に応じて保険会社などからメーカーなどへの求償を検討する考え方が示されています。
まとめ|「自動運転だからメーカー責任」と単純には決められない
自動運転中の事故責任を考えるうえで、最も重要なのは自動運転レベルと事故原因を分けて確認することです。
レベル2では、ドライバーが運転の主体です。
ハンズオフ機能などを使用していても、レベル2である限り、ドライバーには周囲の監視や必要な操作が求められます。
一方、レベル4ではODDの範囲内でシステムが運転を担います。
しかし、事故が起きたからといって、
「すべてメーカー責任になる」
わけではありません。
- 車両所有者・運行供用者
- 運行事業者
- 遠隔監視・運行担当者
- 車両・システムメーカー
- 保守・通信等の事業者
など、それぞれの義務と事故原因との関係が確認されます。
そしてもう一つ重要なのが、
「被害者への補償」と「最終的な責任分担」を分けて考えることです。
国土交通省の2018年報告書では、レベル0から4までの車両が混在する過渡期について、従来の運行供用者責任を維持して被害者救済を図り、必要に応じて保険会社などからメーカーなどへの求償を検討する考え方が示されています。
自動運転技術が進化しても、事故が起きたときに最優先されるべきなのは被害者の救護と安全確保です。
その後、
「誰が運転していたか」だけではなく、「システムがどの状態だったのか」「誰にどの義務があったのか」「事故原因は何だったのか」
をデータや証拠から確認して責任を判断していくことになります。
今後、レベル4の自動運転バスやロボタクシーが普及していけば、自動車保険や事故責任の考え方もさらに重要になってくるでしょう。
記事作成に使用した一次情報・公式資料
- 国土交通省「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」
- 国土交通省「自動運転における損害賠償責任に関する研究会 報告書概要」(2018年3月)
- 国土交通省「ロボットタクシー導入等に向けた自動運転における自賠法上の損害賠償責任に関する検討会」
- e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法」
- 国土交通省「自賠責保険・共済ってどんなもの?」
- 警察庁「自動運転」
- 警察庁「『特定自動運行』の解釈及び運用上の留意事項」
※本記事は2026年10月7日時点の法令・公表資料をもとにした一般的な解説です。個別事故の責任、過失割合、保険金の支払いなどは、事故状況、証拠、契約内容等によって異なります。


コメント